突撃隣のアイドル候補生

自作SSを載せたりニコ動のお気に入りやiM@S【MAD】を紹介してみたり。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

スポンサー広告 |

千早SS 「help with me」

千早が独りで悩み苦しむ話。

題名はその日の英語の授業で習った例文からつけました。最後が何となく気に入らなかったりしてます。
未来館で続きが気になるみたいなコメを頂いたのでもしかしたら続き書くかもです。




私の両親は仲が悪い。
だからか、私の友達は音楽だけになってしまった。
別に人とコミュニケーションを取るのが苦手なわけじゃない。
とにかく、私の友達は音楽で……むしろ音楽が全てだった。

でも、そんな私に音楽以外のことを教えてくれた人がいる。

「おっはよっ、千早」

「おはようございます、プロデューサー」

ちょっと頼りなさげな彼、私のプロデューサー。
まだ半年しかプロデュースしてもらってないのに私みたいなのをここまで育ててくれた。

「今日は大手CDショップで新曲発売を記念したサイン会だ。事務所に来るなりで悪いんだが……すぐ車に乗ってくれ」

「あ、はい、大丈夫です。車は地下のいつもの場所ですか?」

あぁ、という声と共に車の鍵も飛んできた。
私はそれを両手でキャッチし、地下へと続く階段を降りていく。




カンカンカン、と響く足音。地下へ降りていくにつれて私の気持ちも沈んできた。いや、ずっと沈んだままだったのかも……しれない。

「くっ……」

右腕を左手でぎゅっと押さえる。
思い出さないようにしようとすると……尚更輪郭を帯びて頭に浮かんできてしまう。
昨日の出来事を……思い出してしまう。




それは私がちょうどお風呂から上がり、自室へ向かうときのこと。
「おい、千早の給料明細みたいなのないのか」
「千早のですか?」
と、リビングからドア越しに父と母の話し声が聞こえて来た。
私は髪をタオルで拭きながら、何気なく立ち止まった。
「そうだ、早く見せろ」
「はいはい……これですよ」
「…………」
リビングからはすぐに話し声が途絶えた。
私は自室へ向かおうと足を踏み出そうとしたその時、
だん!
という大きな音がした。
「あいつ!俺より稼いでるじゃないか!」
「しょうがないじゃありませんか、もう千早はトップアイドルといってもいいくらいの……」
「何がトップアイドルだ!今まで誰が育ててやったと……」
私はそこまで聞くと足早に自室に戻り、鍵を閉め、布団に入って毛布を頭からかぶった。

また、私が原因で……父の癇癪が始まった。

私は母への罪悪感を感じながら、それ以上の怒鳴り声を聞かないようにするためにCDプレイヤーにスイッチを入れる。そしてイヤホンを耳にしようとしたとき……

「アイドルなんて辞めちまえ!」

父の怒声が家に響き渡った。




プロデューサーの車の助手席に座り、CDプレイヤーを再生する。
でも……曲が頭に入ってこない。
昨日の父の言葉が……響いている。頭に……そして心に。
音楽に集中できない自分に腹がたち、半ばむしり取るようにしてイヤホンを耳から外した。

「くっ……」

“アイドルなんて辞めちまえ”
父の怒鳴り声は……
私の音楽を、否定された気がした。
私の存在を、否定された気がした。

そして……


私の全てを、否定された……気がした。


「ぅぅ……」

私は自分自身を抱きしめるようにした。

誰か、教えて?
私は、これから、どうなるの?
誰か、教えて?
私は、これから、どうすれば、いいの?
アイドル、辞めたほうがいいの……?

「お待たせ!」

そんな私の気も知らず、プロデューサーが運転席側のドアから入って来た。
ばっ、と姿勢を正す。
人にこんな惨めな姿は見せたくない。

「いえ……大丈夫……です」

私は俯き加減でそう答える。
プロデューサーは相変わらず律義だなぁと笑って、私からキーを受け取り車のエンジンをかける。

「じゃ、行こうか」

「……はい、お願いします」

そうして私たちは出発した。私の心には暗い影を落としたまま。




「はや…ち…や」

誰かが、呼んでる……?

「起きて、千早」

あ……!?

ガバッと私は起き上がる。いつの間にか寝てしまったみたいだ……って!

「じ、時間、大丈夫ですか!?」

「あぁ、そんなに慌てる時間じゃないよ」

「よかった……」

「そんなことより、千早」

運転席からプロデューサーの左手が私の右頬へ延びてくる。
そして彼は優しく頬を撫でた。

「ぷぷぷぷろでゅうさぁ!?」

あまりに唐突だったため声が裏返ってしまった。

「あ、あ、あ、あの!?」

しかし、私の慌てようとは対照的にプロデューサーは私の頬を撫でながら、とても心配そうに私を見て言った。


「千早……泣いてるぞ?」


え?と思って左の頬に手を添える。
冷たい感触がある。

「本当……ですね」

「なにか嫌な夢でも見た?」

「いえ、特に」

「そっか……じゃあ、なんか嫌なことでもあった?」

ドキッとした。でも、人に弱みは見せたくなくて

「……いえ、大丈夫です」

と言ってしまった。

「すみませんでした。眠ってしまって」

いつもの私を

「仕事に行きましょう」

演じてしまった。




「これからも活動頑張ってね!」
ありがとうございます。
「千早ちゃんの歌声大好きだよ!」
ありがとうございます。
「応援してるよ!」
ありがとうございます。

新曲のサイン入りCDを買ってくださる人と握手をし、声援に対して笑顔で御礼を言う。
どんなに辛いことがあっても仕事は仕事。
プロとしてしっかりこなさなきゃいけない。
だけど……
「頑張ってね」
という言葉が胸にちくりと痛む。
父の言葉との矛盾。
それが私の心を尚更締め付ける。
それがあまりにも苦しくて、私は早く終われとばかり祈ってしまった。




「お疲れ様でした、プロデューサー」

サイン会は無事に終わった。
私は自分の仕事をしっかりこなせたと思う。

「どうした?なんか今日、いつもの千早じゃないぞ?」

しかし、プロデューサーにはお見通しだったみたいだ。

「いえ、いつも通りです」

「そうか?空元気、みたいな感じがしたけど……」

どうして私のことそんなに分かるんですか?

「そんなこと……ありません」

どうして私にそんなに優しくするんですか?

「千早、なにがあったのかは知らないけど……一人で抱え込むのはよくないぞ?」

どうして私の心に入り込んでくるの?

「まったく……千早は強情っ張りだなぁ」

そう言って私の頭にぽん、とプロデューサーの暖かく大きい手が置かれる。

「俺はいつでも千早の味方だから」

そして、ニッと私にプロデューサーが笑いかけてくれた。その優しい笑顔を見た瞬間、

「うぁ……ぅ……」

視界が歪んだ。

「ち、千早!?」

「ぷろでゅう……さぁ……」

私は頭に乗っていた手を両手で挟み込み、胸のまえでぎゅっと抱きしめた。

「ぷろ、でゅう、さぁ……」

涙が後から後から込み上げてくる。
その涙は私の心の氷が溶けた証なんだと思う。



私は独りじゃないんだ。
私はここにいていいんだ。
プロデューサー……助けてください……。



(了)

スポンサーサイト

テーマ:アイドルマスター - ジャンル:ゲーム

SS | コメント:0 | トラックバック:0 |
<<雪歩SS 「HAPPY“Christmas”BIRTHDAY!!」 | HOME | 亜美真美SS 「兄ちゃん以上恋人未満?」>>

この記事のコメント

コメントの投稿















コメント非公開の場合はチェック

この記事のトラックバック

| HOME |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。